第1回目の区切り打ち|1日目|第1番〜第8番
初めての四国お遍路へ
憂うつ気分を我慢しながらやっていた仕事が一区切りついて、ずっと行きたかったお遍路に旅立ちました。この時期、うつの状態は変わらず完全な停滞期に入っていました。
これ以上よくもならないし、これ以上ひどく悪くもならない。
でもいつも憂鬱。何のために生きているのかわからない。でも死ぬほどの勇気はない。
「自分で自分の考え方を変えるしかない」ところまでは気づいたのに、どう変えていいのかわからない。とにかく今の気持ちをリセットしたい。考え方を変えたい。
その想いが沸点に達して、ついに足を向けたのが第1番札所「霊山寺」です。
1日目/第1番札所「霊山寺」10:30
「モジモジのスタート」
車で徳島入り。霊山寺に、到着したのは午前11時ごろ。
事前にガイド本は読んでいたけど、「やり方はここで聞ける」と書いてあったからそうしようと思っていたら、バスの団体客の前に挫折><。
やっぱり人とかかわるのが、イヤなのがしみついてるのかな・・・
お遍路の必要品も、「お遍路に必要なものはここで買えばいいや」と思っていたけど、もじもじして聞けずじまい。自力で必要と思うものだけ、何とか購入。
(結局、「白衣」「輪袈裟」「納経書」「仏前観経次第」「納め札」「巡礼バック」…全部で1万円くらい)
この間にも、本堂と販売所をいったりきたり。
「何やってんだろ」と思いながら、そこにいる人の参拝の様子を観察して、見よう見まねでお詣り。大型バスで来た人たちは、本堂でお坊さんの説法受けられるみたい。
本堂にいたら一緒に話を聴けた。ちょっと得した気分。
霊山寺にある池。コイがいっぱい。
それにしても、かなりのロスタイム。1時間半近くも滞在してしまった。「どうしたらいいの?」とか、「何買わなきゃいけないの?」とかであっという間。
のっけから前途多難と思ったけど、よく考えたら、この間、「憂うつ感」が消えていた。
何かを必死にやってると、余計なことは考えなくなるもんだ。人間って実は便利にできているのかもしれない。
第2番札所「極楽寺」12:15
意外に閑散とした中でこっそり声を出してお経を読む
1番からたったの1キロちょい。車だから、ほんとにあっという間に2番まで移動。
なんだか日本じゃないみたいな山門。
しかも、大きなお寺だけど、閑散としている。さっきの団体客はどこに?
今度は見よう見まねができないから、何とか自分で参拝しなきゃ!
山門前で一礼。
お寺に入って、本堂を探すと結構な段数の石段の上。
「これがお遍路か〜」とちょっと緊張。
(この後遭遇する山のお寺に比べると実はこの段数なんて本当に大したことないんだけど、初めての石段でちょっと嬉しかった)
「仏前観経次第」を広げて、恐る恐るお経を読む。
このときは気づいてなかったけど、私の持ってる「仏前観経次第」は表裏があって、裏にも続きがあった。気づかずに、表だけ読んで満足してしまった。
あと、本堂の後は大師堂でも同じことをするのがお作法なんだけど…。
省略してロウソクと線香とお賽銭を入れて一礼して終了。
ここまで、これだけでいっぱいいっぱい。
さっぱりわかってなかったけど、このとき遭遇した夫婦お遍路さんとこの後何度も遭遇して、どうも私が色々間違っていることに気づかせてくれる(観察でだけど)
長命杉とか、仏足石とか色々見てから、納経所へ。
霊山寺のご朱印は、買った納経書に最初から押してあったから、目の前で書いてもらうのはここが初めて。
あと、「御影」というご本尊様のお姿を同時にもらえることに気づき、このままだと失くしてしまいそうなので、ここにある売店で「御影帳」を買った。1000円。
ついでに、草餅も。なかなか、美味しい草餅。お昼ごはんの代わりに頂く。
第3番札所「金泉寺」13:00
3件目でちょっと慣れてきた
またもご近所。たったの3キロくらいの移動だから、車だと本当にあっという間についてしまう。
でも、カーナビの言うとおり進んでいたら、大きな道路から田んぼの脇道に入る箇所がややこしい。何度かあらぬ方向へ進んでしまう。
ほんとにこんなところにあるの〜?という側道を通ってついたお寺がここ。
2番もそうだったけど、3番の山門も中国チック。あまり本州では見かけないスタイルで、何だか異国情緒たっぷりだ。
まだ3件目だけど、お遍路にちょっと慣れてきた気分。団体客もいないし、初めてちょっと大きな声でお経を読んでみた。
なかなか新鮮。般若心経をちゃんと読むのなんて初めてだ。(この時、裏のことにはまだ気づいてない)
何だか、ちょっと満足感。
「やればできるじゃん」みたいな感じで、ご朱印を戴いて次へ進む。
第4番札所「大日寺」13:45
今度は5キロくらい移動。
自然の中にある初めてのお寺
だんだん、田舎っぽいところに入って来るなぁ…。山のふもとにポツンとあるお寺。
札所でなかったら行くことないだろうなという門構え。
駐車場からちょっと歩くと山門。ここでは団体客に遭遇。2番、3番からここでおいついたのかな?
でも、中に入ると池があったり、
かっちょいい龍から水が出てる手洗い所があったり。
なんとなく、いい感じ。
1番からしばらくは、どこもご近所。
車移動だとあっという間に次のお寺についてしまう。
なんだか、だんだんどこがどこだったか混乱してくる。
これが噂のスタンプラリーをしているかのような気分?
そんなつもりで来てるわけじゃないけど、感覚がそうなるのはわかる。
でも、この単純行程を繰り返していると
本当にうつうつ気分が消滅していく。
余計なことを考えなくてすむ。移動途中のコンビニで、パンを買って車中でいただく。
5番札所「地蔵寺」14:10
ちょっといい加減なくらいがちょうどいい
ここへの移動もたったの2キロ。車だとほんとに数分でついてしまう。
しかも道も平たんだから、まだ何も困ることがない。お遍路なのに楽して申し訳ない気持ち。
たぶん。歩きお遍路なら、季節のわびさびとか色々な物思いとか。
そういう感覚を味わいながら歩けるんだろうけれど、車で行くひとは、ここまでかなり楽な工程を進めてしまう。
もしお経もあげずにご朱印だけもらうスタンプお遍路をしている人なら徳島の札所は9番までならアッというまに終了しちゃうに違いない。
さて、地蔵寺…。
境内の中にものすごく大きな木があって、ひと目みてこの木が好きになった。
何百年もここにずっと立ってたんだろうな。
あまりに素敵なので何枚も写真を撮りました。
地蔵寺の大木ちゃんの写真コレクション。
ここまで来てほんとにしんみり思うのは、本当はお寺の由縁とか歴史とか。
そういうものをしっかり学ぶ?ような感じで回るのかと思ってたけど、
実際、ずっとお寺を回り続けると、そういうことをするのはちょっと無理というのがわかった。
真面目な気持ちでお遍路をしているけれど、
あまりにも真面目に「そういうことしなきゃ」と思うと現実的に無理なことにすぐ気づく。
要はどのお寺にいっても、
「真面目にお祈りする」っていうくらいの真面目さでいいんじゃないかなと思う。
実際、うつになる人の大半は真面目すぎるんだよといわれるけど、それはあながち間違ってないような気がする。
自分で自分のことはよくわかってないのかもしれない。
こういうときに、くそまじめな性格とかそういうのを目の当たりにすると、すなおに「あ〜そうかもね」って思えるわけです。
人間、力抜いて生きるくらいがちょうどいいんじゃないかしら。
5か所めで早くもそんな「ちょうどいい、いい加減さ」というものが必要な気がして仕方なくなりました。
6番札所「安楽寺」15:00
どうでもいいことを連想できるのってすごい
またもたったの5キロ移動して、到着。どうもこのお寺界隈は、温泉が湧きだすエリアらしい。
このお寺には宿坊があって、お遍路さんが宿泊できる(有料)のだけど、なんとそこで天然温泉に入れるらしい。
本堂も境内も、なんだかきれいなお寺さん。
新しいのかな??境内には、朱塗りの塔もあって、緑に映えてすごくきれい。
あと、ここにも立派な池があるんだよね。立派な寺構えのとこには、お約束で池があるんだろうか?
そんなどうでもいいことを考えながら参拝。
どうでもいいことを頭で連想できるのって、やっぱり家では無理だから、こういう連想しまくる参拝ってうつ人間にとっては本当に貴重だと思う。
このお寺の周辺は道路も広いし、駐車場も広い。
道路の向かいも駐車場になっていて、木の間にお大師さまがいるんだよ。
7番札所「十楽寺」15:30
人の目を気にしない。自分は自分。
またもや、たったの1キロ移動…。車に乗ったかと思うと、もう次に到着。「十楽寺」。
お遍路も最初のうちは、楽をさせて安心させる作戦なんだろうか。(この後のことを知ってると、そう思えてならない)
十楽寺の山門も、とても立派。
ここで再びお遍路の団体様に遭遇した。
ひとり遍路が、団体様に遭遇すると、いろいろ大変。というか、気を遣う。
お線香をあげるところもロウソク入れるところも、混み合うし、納経所ももちろん込み合う。
それよりなにより、先達さんが率いている団体様のお経は、ちゃんと節がついててかっこいいんだけど。
自分のは自己流だから恥ずかしくて声が大きく出せない。
要は、人目が気になるんだ。
これは、うつじゃなくても同じだと思うけど、
人のことを気にしすぎることもこの病気のよくないところのひとつだと思う。
人は人。自分は自分。
お遍路中は変な意味じゃなくて、
「旅の恥はかきすて→人のことを気にしない」っていうのを実践するところなんじゃないかな。
ここで恥ずかしいと思ったとしても、その瞬間で終わり。
このあとかかわることもない。
いつまでも、「あのときのかっこ悪かったよね」なんて思われることもない。
自分しか自分のことを知らないんだから。
もしかすると、人生の大半は本当は自分しか知らないことばかり。
自分だけが恥ずかしいと思ってることばかりなのかもしれない。
8番札所「熊谷寺」15:50
金色の仏さまに出会う
たったの3キロちょっと移動すると、8番「熊谷寺」。
今までのお寺とちょっと雰囲気が違って、山寺という感じ。
こんな長い道を通っていくと、かっこいい山門が見える。
ここで一礼。
階段をのぼると、目の前に本堂。
そこに見える「金色」の仏像さま。
これが、すごくきれいだった。
ちょうど夕方近い時間で、薄暗くなりかけだったせい?
遠目でも光って見える。
いろいろなお寺を訪ねていると、ご本尊さまは秘仏で全然見れないことも多々あるけど
ここの仏さまはキンキラキンに見える。
やっぱり目に見えるもののほうがありがたみを感じてしまうのは人間の性なのかもしれない。
このお寺がちょっと変わってるのが、本堂の横にある大師堂。
本堂の横にある階段をさらに登り切ったところにあった。
ここから、下を見下ろす光景がなんか不思議だった。
第9番法輪寺 16:30
1日で9か所も行けたという妙な達成感
約2キロ移動して、法輪寺へ。
なんと田んぼのあぜ道の先にあった。正直あまりに普通の場所にあってビックリ。
でも、もっと驚いたのが、ご本尊様が「涅槃像」だった。涅槃像というのは、横になった仏さま。四国お遍路の札所の中では、ここだけ。
涅槃像って、タイとかインドとかそういうところにあるイメージだったけど、日本にもあった。(見れるけど残念ながら写真は撮っていない)
それにしても、到着したのが16:30。
納経所が開いているのは17:00までだから、めちゃくちゃちかいのに、次の札所はあきらめるしかない。残念。
でも、今日1日、頭をぐるぐる回っていた悩みとか後悔とかそういう、うつな感情が全くなくなっていた。
車お遍路でこうなのだから、歩きの人はもっとすごいんじゃないかな。
病気になってから感じることのなかった「達成感」も、じんわり沸き起こってきた。
何かひとつのことをやり遂げるって、意外と大事なんだなと妙に感心した。
参拝を終えて、今日はここまでにする。
初日の宿 ルネサンスリゾート鳴門
たぶん、ちっとも人の参考にならないことをひとつ。
実は、かなり要領の悪いことに、私がとった宿は、ルネサンスリゾート鳴門。(写真は部屋からの眺め)
ここから、1番札所方向に20キロ以上移動する。そして、明日はまたこの近辺に戻ってくるという行路。
往復で考えると40キロものロスタイム。
なぜ、お遍路してるのに道中で宿をとらなかったかというと、民宿タイプの宿が正直とても苦手だから。
あと、単純にこの宿の温泉に入ってみたかったというのもある。
あと、10時半から始めたお遍路が何番まで行けるか予想ができなかった。
言い訳はいっぱいあるけど、要は「泊まりたい」ところに泊まった。ただそれだけ。
こうして、非常に要領も悪く、費用的にもロスの多いお遍路デビュー初日が終了した。
宿の感想
海が目の前に見れるツインのお部屋をシングルユースできた。当然といえば当然だけど、きれいだしかなり快適。窓を開けると波の音が聞こえる。
まだ人と必要以上に接するのが嫌だったし、海が見たかったから満足度は高かったです。
旅行サイトで予約して、平日のお得プランで1万2800円。朝食付き。駐車場代はいらない。
お遍路宿としては高いけど、満足。朝食はかなり種類も豊富でおいしかった。
一番札所に行く前の前泊地を探している人ならここを拠点にしてスタートするのもよいと思う。
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